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” The Neverending Story " by Michael Ende (『はてしない物語』 by ミヒャエル・エンデ)

 原題:Die unendliche Geschichte
ドイツの作家ミヒャエル・エンデによる傑作ファンタジーです。
映画『ネバーエンディング・ストーリー』が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
子どものころにハードカバーの日本語版を読んで以来好きな本ですが、せっかくなので英訳版で読み返してみました。

<あらすじ>
読書好きのバスチアンはお話を考えること以外には特に取り柄のない太っちょ少年。
ある日いじめっこたちから逃げるために駆け込んだ古本屋で一冊の本をみつけ、衝動的に盗んでしまう。
後戻りができなくなったバスチアンは学校の屋根裏にこっそり隠れてその本を読みふける。
物語の中のファンタージェン国はあらゆる場所が「虚無」になるという危機に陥っていた。ファンタージェンのすべての生き物は「幼な心の君」(英:Childlike Emperor)がいなければ存在しえないが、彼女が病気になってしまったのと虚無には何かつながりがあるらしい。
ファンタージェンを救う方法を探す使者として、少年アトレーユに白羽の矢が立った。
そしてバスチアンは、読み進めるうちにだんだんおかしなことに気づく。
どうやら自分の存在が、登場人物たちに影響を与えているようなのだ…。


 
 <感想>
何からほめればいいのかわからないくらいですが…
私がこの本を好きな理由の一つ目は、「読む」楽しさを味わえることです。
人気のある本はオーディオブックになったり、映画化されたりします。時には映画のほうが面白いなんていうこともあるかもしれません。
でもこれは誰かに読んでもらったり映像で見るのではなく、本のページをめくりながら読むことで最大限楽しめるようになっているのです。
初めて読む場合は日本語のハードカバー版が一番いいかもしれません。バスチアンが手に取る本と装丁がまったく同じになっていて、中も作中の描写と同じく緑と赤の二色刷りになっています。
こちらの世界のできごとは赤、ファンタージェンのできごとは緑の文字で、交互に語られていきます。
エンデさんは『鏡の中の鏡―迷宮』という本を書きましたが、本を読むバスチアンと、そしてそれが書かれている本を読む自分、それはまさに鏡の中に鏡が映っているような感じです。入れ子状とでも言いましょうか。
ちなみに私が読んだ英訳版のペーパーバックは二色刷りではなくイタリックと普通の文字で分けられていました。
ドイツ語版のペーパーバックをつい買ってしまったのですが(PIPERから出ている灰色の表紙のもの)、そっちはページの質もいいし二色刷りになっていてきれいでした。その分ちょっと高いのですが。
この本はドイツに次いで日本で人気が高いようですが、原書を忠実に再現した装丁の妙が一役買っているのでしょう。

ファンタージェンでのお話は26個の章に分かれていて、それぞれの扉絵がAからZを順番にモチーフにしたものになっています。
そしてその章の文はそのアルファベットの文字から始まっているのです。
ここは日本語版では味わえないところですね。扉絵は同じですが。

理由二つ目は、とにかくイマジネーションが半端じゃない!ということです。
ファンタージェンにはありとあらゆる場所やキャラクターがでてきますが、それらのアイデアを使えば何冊も本ができてしまいそうな世界観です。
それが贅沢にも一つのお話に濃縮されて…本の中の話なのに極彩色!って感じです。
ほんとにエンデさん、どんだけアイデア湧くの!?

理由三つ目は、ファンタジーや子供向けの作品でありがちな、主人公属する「善」と敵である「悪」との戦いという構図を使っていないところです。
ファンタージェンが危機に陥っているのも「虚無」が広がっているからであって、よくある悪者が国を支配しようとしている話ではありません。
もちろんこの本でも主人公が苦難を乗り越えて成長しますが、それは悪を倒すことではなく、思い上がっていた自分自身を見つめ直すことによってなのです。
今の世界情勢を見てても思うのですが、絶対的な悪がいてそれを倒せば平和になるならいいけれどもそれほど単純じゃないですよね。
自分が善だと信じて疑わないことは怖いことです…。

そして旅を終えたバスチアンは人を愛することを知るのです。児童書でありながらなんと深いテーマだろうか…
展開を知っていても最後のあたりでまたウルウル来てしまいました。大人が読んでも感動できると思います。
映画もヒットしましたが、原作を読んでから考えるとバスチアンが最後にフッフールに乗っていじめっこに仕返しをして終わるというラストは本当にありえない!エンデさんが怒ったのもわかります。
この話を原作にしといてあんなラストにしようと思うなんて、どうかしてるぜ!

最後に英訳版を読んでいて心に残った一節をご紹介します。

" But like all true transformations, it was as slow and gentle as the growth of a plant. "

挑戦したいことがあるけどなんだか出遅れているような気がして、どこから手をつけていいか途方にくれてしまうような時などにこの言葉を思い出したいです。
多読にも当てはまりますね。今日勉強したからっていきなり明日難しい本が読めるわけじゃないけど、植物に水をやるみたいに毎日少しずつでも英語を読んだり聞いたりしていれば、それがどんどん積み重なって、いつの間にか読める本の幅が広がっているのに気づくはず!

この本をまだ読んだことのない人は、日本語でも英語でも、借りてでもなんでもいいので一度読んでみてほしいですね。この記事がそのきっかけになることがもしあったら、ブログを作った甲斐もあるものです…。


0140386335 The Neverending Story
Michael Ende Ralph Manheim 
Puffin 1993-01-01

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4001109816 はてしない物語
ミヒャエル・エンデ 上田 真而子 
岩波書店 1982-06-07

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