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" Q&A " by Vikas Swarup (『ぼくと一ルピーの神様』 by ビカス スワラップ

 これはカナリの自分的ヒットだった作品です。
タイトルがそれぞれ全然違うのでわかりづらいですが、英語で書かれたこの" Q&A "が原作で映画版のタイトルが「スラムドッグ・ミリオネア」、日本語訳が「ぼくと一ルピーの神様」です。
映画とはけっこう内容が違っているらしいので、ご覧になった方も十分原作を楽しめるのではないでしょうか。

"I have been arrested. For winning a quiz show."
なんというキャッチーな書き出し…!
主人公はあるクイズショーに出て優勝し大金を手に入れられることになったんですがつかまってしまいます。
ズルしたんだろと疑われゴーモンみたいなことをされているところへ弁護士を名乗る女性が乗り込んで助けてくれます。
そして弁護士と一緒に出演したクイズショーのビデオを見て、なぜこんな答えを学があるわけでもない自分が知っていたか?というのを一問一問説明していくわけです。
章の頭で司会者が出した質問がひとつ明らかになり、主人公が身の上話をしていくと、なるほどなんでこのクイズに答えられたか、というのが章の最後にはわかるようになっています。
自己啓発書っぽいとか説教くさいとかはなく、ナゾがとける感じを味わえて楽しいです。
タージマハルが登場したり、インドの空気も味わえます。ときにはインドのブラックな部分も…。

このクイズショー、ミリオネアの元ネタであろう番組なので雰囲気はつかみやすいですね。
ドンデン返しもあって最後まで面白い本です。
著者のビカスさんは外交官。イングリッシュ・ジャーナルに載っていたインタビューを以前読みましたが、売れても子供には地に足のついた生活を送らせたいと思っていらっしゃるようでした。さらに好感度アップ!

新作の" Six Suspects "も気になってます。

055277250X Q and A
Vikas Swarup
Black Swan 2006-02-01

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4270102772 ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)
ヴィカス スワラップ 子安 亜弥
武田ランダムハウスジャパン 2009-02-20

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No One Belongs Here More Than You by Miranda July

映画監督であり、パフォーマンスアーティストであり、作家でもあるミランダ・ジュライさんの短編集です。
タイトルからしてちょっと不思議な感じがしますよね。面白い感性を持ってるな~という文章がいたるところにあります。
私は以前新潮社の雑誌『yom yom』で”This Person"と”The  Swim Team"の二つの短編の翻訳を読んでけっこう不思議な感じが気に入ったので、それらが収録されているこの本を買ってみました。

例えるならアルバムCDみたいな感じで、何度も繰り返し聞きたいシングル曲みたいな短編とそれに比べると印象が薄いかなっていう短編の二つにわかれるという印象でした。

わりと詩的です。私は一番最初の短編"The Shared Patio"の文章に心を掴まれまくりでした。
アマゾンでは途中まで立ち読みできるので興味があったら見てみてください。ジュライ節が堪能できると思います。

”The Sister"というお話はへんてこな恋愛にまつわる翻訳短編集『変愛小説集2』に収録されているようですが、選ばれるだけあってかなり変な話ですよ~。笑
ある男性が友達にこんど妹に会いなよ~と言われるのですがすれ違いまくりでなかなか会えないんです。男性はいい歳なのでその友達の妹もそれなりの年齢のはずなのになぜか若い女の子だと妄想し、会うのを楽しみにする…という話なんですが、ラストにビックリ。な、なにしてるんだ~!

あ、ジュライさんがこの本の宣伝?のために作ったらしいウェブサイトがあるんですが、面白いですよ。本のタイトルで検索すると上のほうに出てくると思います。なんかガス台に文字がかいてある写真のやつです。笑

あと著者自身が朗読してるオーディオブックも出てるようです。
それにしてもこの本の表紙はシンプルなのに可愛い…センスがいいですな。本棚を彩ってくれてます。

0743299418 No One Belongs Here More Than You: Stories
Miranda July
Scribner 2008-05-06

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Meet Me in the Moon Room by Ray Vukcevich

表紙からして不思議感が漂うこの本…中身はかなり奇想天外な短編集です。
岸本佐知子氏編訳の『変愛小説集』にこの著者の作品がふたつ収録されていて、その変っぷりに惹かれてこの短編集を購入してしまいました。

体がどんどん宇宙服になっていく病気(?)にかかった恋人たちの話とか、ひげのかわりにヘビを鼻の下にはりつけてかわいがる男の話とか…どこからその発想が!?と聞きたくなるほど面白くて変な話がいっぱいです。

個人的には”Pink Smoke”というタイトルの、ものすごくスリがうまい女の人とその恋人のお話が気に入りました。

『変愛小説集』はこの著者の作品のほかにもたくさん変なお話が載っていてすごく面白かったです。
今知ったのですが変愛小説集2も出ているんですね…読まねば!

Meet Me in the Moon Room: Stories Meet Me in the Moon Room: Stories
Ray Vukcevich

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Nocturnes by Kazuo Ishiguro

(邦題 『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』)

音楽にまつわる短編集です。
カズオ・イシグロの作品を読むのはこれが初めてでした。
あまり音楽に詳しくないし楽器もやらないので専門用語がいっぱい出てきたらどうしよう…と思いましたが大丈夫でした。

哀愁あふれる物語たちといった感じでしょうか。
うまく言えないのですが、人と人とのやりとりの中にリアルさを感じました。
会話の中で、ちょっと険悪なムードが混じる感じとか。
行動ににじみでる相手の態度とか。
その状況がありありとイメージできました。
けっこうクスッとくるところもありましたよ!

二番目の作品、"Come rain or come shine"が一番気に入りました。
この作品のラストの文章が個人的に大好きです。
なんともほほえましい幸せな気分になりました。

Nocturnes Nocturnes
Kazuo Ishiguro

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